小学生低学年の診療
小学校の低学年になると、いよいよ大人の歯である永久歯の数も増えてきます。そこで重要となるむし歯予防の処置や、お口の中で起こる変化について詳しく解説します。
大人の歯をむし歯にさせないために
生えたばかりの大人の歯を専門的には「幼若永久歯(ようじゃくえいきゅうし)」と呼びます。まだ歯冠が半分歯茎に埋まっていたり、エナメル質が未成熟であったりと、むし歯にかかりやすくなっているため注意が必要です。生えてきたばかりの永久歯をむし歯にさせないためには、正しいブラッシングを習得することと、フッ素による歯質の強化が有効といえます。いずれも、歯科医院を受診することで達成できますので、小学校の低学年になったら、定期的に歯科医院を受診するようにしましょう。
歯科治療を嫌いにならないために
毎日一生懸命、歯磨きをしていても、むし歯になってしまうことがあります。歯の表面が黒ずんだり、穴が開いたりしていたら、すぐに歯科医に診てもらいましょう。この時、大切なのが「歯医者嫌い」にならないことです。お子さんの多くは、最初のむし歯治療で歯医者嫌いになります。それは痛い思いや不快な思いをたくさんするからです。そこで事前に、歯科治療に伴う処置の意味について理解しておきましょう。
歯茎に注射を打つ理由
注射というのは、腕に打つのでも大きな不安感を伴うのに、それを歯茎に打つとなると、誰だって恐怖を感じるものです。とくに、むし歯治療が初めてのお子さんにとっては、言葉に表現できないほど怖いことに違いありません。けれども、歯茎に麻酔を打つことによって、歯を削る際の痛みがなくなることを理解できれば、その恐怖にも立ち向かえるはずです。また、最近では局所麻酔を打つ前に、ジェル状の表面麻酔を施す歯科医院が増えてきていますので、そもそも注射による痛みはほとんどありません。
歯を削る際に生じる不快な音や振動
むし歯を取り除くには、電動のドリルを使って削り取る方法しかありません。その際、発生する不快な音や振動は、避けて通ることができないものですが、痛みに直結しているわけではないことを理解しましょう。歯を削る時には麻酔が効いていますので、不快な振動や音は発生しても、痛みを感じることはないのです。
ゴムのマスクをかける理由
小児歯科でのむし歯治療では、ラバーダムと呼ばれるゴムのマスクをかけることがあります。ラバーダムをかけると、お口全体が塞がれるだけでなく、呼吸もしにくくなります。その状態で歯を削られるものですから、お子さんの恐怖心も高まります。けれども、ラバーダムをかけることによっては、周りの歯を傷つける心配がなくなり、なお且つ歯が汚染されるのを防ぐことができるため、安全な歯科治療を実践する上では非常に重要な装置といえます。
むし歯による歯やお口の変化について
大人になると、自分の歯がむし歯になったら比較的早く気付くことができますが、小学校低学年のお子さんだと、なかなかそうはいきません。そこで親御さんは、お子さんのお口の中の変化に敏感になっておいてください。歯が痛くなるのはもちろんのこと、歯が黒くなったり、冷たいものや甘いものがしみたりするようになったら、それはむし歯のサインです。いずれもむし歯菌によって歯質が溶かされることによって生じる症状です。
混合歯列期に見られる歯の異常
小学校低学年は、乳歯と永久歯が入り乱れ始める時期です。以下に挙げるような異常には気を付けてください。
乳歯の晩期残存
乳歯が抜けずにいつまでも残り続けると、下に控えている永久歯が生えてこられなくなります。その結果、永久歯が異常な方向へ移動したり、生えてくるスペースが不足したりするため注意しましょう。
舌突出癖による開咬(乳前歯脱落後に起こりやすい)
小学校低学年まで舌を前に突き出す癖である舌突出癖が残っている場合は、お母さんがやめさせるように働きかけてください。いつまでも舌を前に出し続けていると、開咬(かいこう)と呼ばれる歯列不正が生じます。上下の前歯が前方へ傾斜して、前歯でものを噛むことができなくなる症状です。開咬は口呼吸の原因にもなるため、早期に改善する必要があります。なかなか治らない舌突出癖に関しては、小児歯科で治療を受けることも可能です。
みにくいアヒルの子の時代(すきっ歯)
永久歯への生え代わりの時期には、「みにくいアヒルの子の時代」を経験することが多いです。歯列の中に不自然な隙間が生じるため、このような名前がつけられています。ただ、そうして生じた隙間は、永久歯が生えてくることで自然と閉鎖されるため、とくに治療する必要はありません。